工務店コンサルタントのクライアント企業である工務店の事業戦略を考えていく上で、他社との差別化によって独自のアピールポイントを強調することが検討される場合もあります。
このページでは、工務店コンサルトが考える工務店の差別化戦略や、具体的な事例などについて解説しています。
多くの方から選ばれるために、つい価格を下げたら良いと思いがちです。しかし価格競争に巻き込まれてしまうと、いくら受注が増えたとしても利益につながらず経営を苦しめてしまう可能性も出てきます。また利益を出すためには家づくりに必要な材料費を抑える必要があり、質の劣った住宅になってしまうことも。その結果、質の良くない家というイメージが定着してしまい、受注数が低下するという悪循環に陥ってしまうのです。
そのため価格競争で受注を得るのではなく、他社との差別化戦略を講じることが大切になってきます。たとえば自社の特別な技術に対し特許を取得し、その特許を活用した家づくりを行えば、自社独自のブランドを確立することが可能です。他者にはマネできない特許技術による家づくりは、顧客にとっても魅力的に感じ、たとえ他社よりも価格は高いとしても、その技術を求める人が現れてくるでしょう。つまり価格競争によって価格を下げる必要はなく、しっかりと利益につながる受注を得ることができるのです。
実は建築業界だけでなく、様々な業界において脱・価格競争の動きが盛んになってきています。たとえば牛丼も安いイメージがあり、かつては1杯300円程度でしたが、これまでよりも柔らかく旨味のある牛肉を使用し、味も一新することでプレミアム感を演出。従来よりも100円程度値上がりしても売り上げは落ちることもなかったそうです。さらにオリジナルのつまみなどを提供するなど独自の価値を生み出すことによって、売り上げアップにつながったとのこと。
つまり激しい価格競争を行ったからと言って、必ずしも消費者が望むものが提供できるわけではありません。すべての消費者が安いものを求めているのではなく、価値のあるものを求める消費者も多いということでしょう。企業の存続のためにも脱・価格競争を行い、他社との差別化を行うのは大切な動きと言えます。
他社との差別化を図りたいと言っても、どのように行ったら良いのか分からないこともあるでしょう。まずは自社だけでなく他社の分析も行い、両社を比較したうえで自社の強みを明確にしていきます。自社だけを分析したとしても、何が強みなのか分からないことも多いため、他社と比べて何がウリになるのかを検討してみましょう。
たとえば同じ工事を行う際、自社が他社よりも短期で対応可能であれば「短期の工期」という強みが生まれます。また他社と比較した際、自社の弱みが分かれば、今後の改善ポイントとして企業を成長させることにつながるでしょう。市場における自社のポジショニングを明確にすることで、競合他社との差別化が図れるのです。
消費者には、たくさんの選択肢を提供した方が良いと思うかもしれません。しかし選択肢が多ければ多いほど、消費者は選択することができずに消費行動に移らないというデータもあります。ある程度、選択肢を絞ることで消費者の購買意欲のアップにつながるでしょう。
たとえば、「○○市 工務店」と検索すると、沢山の工務店のサイトが見つかります。沢山の情報が出てしまうと、どれが良いのか分からず頭を抱えてしまうのです。もし差別化を図っていれば、他の工務店と似ていると思われることがなく、選択過多の状況に陥りにくくなります。唯一無二の魅力をもつ「選ばれる工務店」になるでしょう。
アイエンガーとレッパーの研究では、実際のスーパーにジャムを6種類と24種類の2パターンを用意し、どちらが購入されたかを調査。その結果、立ち止まったお客の割合は6種類が40%、24種類が59.9%となり、選択肢が多い方が興味を惹くという報告が出されています。しかし、商品を購入した割合は6種類が29.8%だったにもかかわらず、24種類はわずかに2.8%でした。
つまり選択肢が多いと、その中から一つに絞ることができずストレスがかかってしまうのでしょう。ただ選択過多であっても、自分の好みがハッキリしている場合には選択肢が多いからと言ってストレスはかからないため、好みのものがあれば購買意欲が妨げられることはないとの報告をしています。
なぜ工務店を経営するうえで、差別化戦略が必要となるのでしょうか?
その理由の一つが住宅の着工数の減少です。国土交通省による「建築着工統計調査」の報告では、1989年の新築の住宅戸数は1,662,612戸というデータがあったものの、2020年には815,340戸となっており、30年間で半分程度まで減少しました。2021年は対前年比で増加しましたが(※1)、野村総合研究所の住宅市場予測によると2040年度には46万戸まで減少するという結果(※2)も出ており、今後より厳しい競争が起こると予想されるでしょう。
つまり着工数自体が減少している中で、数多くの工務店から選ばれる必要があるのです。住宅着工数減少の対策を講じず、従来通りの経営を行えば、多くの工務店が経営困難な状況に陥りかねません。そのため他社との差別化を明確にし、自社の魅力をアピールすることが大切になってきます。自社への受注数を増やすための戦略を立てることこそ、将来にわたって安定的な経営を行うポイントになるのです。
差別化戦略というと、しばしば競合他社との違いにばかり意識を向けがちですが、そもそもどれほど他社と違うことをアピールできても顧客の求める内容に合致していなければ、契約につながることもありません。
そのため、差別化戦略に限らず、あらゆる事業戦略を考える上で、顧客ニーズをしっかりと把握し、さらにそれぞれの顧客の想いや要望へ寄り添った事業やサービスを考えることは大前提となります。
顧客ニーズを把握する方法としては、インターネットやSNSを活用したアンケートや、モデルハウスや現場見学会を訪れてくれた人から直接に話を聞くなど、様々なものが考えられます。
また、時代のトレンドに対してアンテナを張っておくといった姿勢も大切です。
なお、単に顧客ニーズを把握するだけでは不十分です。あくまでもニーズの把握は差別化戦略をプランニングする上で基本の土台を作るための情報であり、実際にどのような戦略を立てていくかはそこから先の話となります。
どのような人々へサービスを提供し、商品をアピールしたいのか、客層や世代といったターゲットを明確化しておくことも基本中の基本です。
一口に「家を建てたい」といっても、実際にどのような家を希望しているのかは人によって様々です。また、地域環境や各家庭の状況などによっても、意見やニーズは多様化してきます。
差別化戦略を考えるということは、自社がどのようなターゲットへサービスをアピールしていきたいのか、具体的かつ明快にした上でプロモーションや事業計画をプランニングしていくことです。そのため、向こうから提示される顧客ニーズを把握すると同時に、自社からもどのようなターゲットへアプローチしていくべきか、冷静に検討することが欠かせません。
なお、ターゲットを絞ってしまうことで、顧客が減少してしまうといった不安を抱くこともあるでしょう。しかし、人間関係においてもしばしば八方美人が残念な結果をもたらすように、100人の人へ適当にアピールして1人にしか反応してもらえないよりも、10人の人へ深くアピールして3人の人に反応してもらう方が、結果的に収益増大へつながります。
ターゲットを明確化するということは、他の顧客を切り捨てるのでなく、あくまでも大切な顧客へより深い部分でつながっていこうとする取り組みだと覚えておいてください。
ターゲットを絞ろうと思っても、まず自社にどのような得意分野があり、どんなサービスを提供できるのか理解していなければ、ニーズと商品のマッチングは根本的に望めません。
自社が提供するサービスや得意分野は、すなわち自社にとっての強みであり、強みを活かしてアピールすることがブランディングの強化や差別化戦略の促進にもつながります。決して自分たちの実力を過信するのでなく、客観的かつ冷静に自社サービスのメリットや魅力を検証し、それを正しく分かりやすく説明できる準備を整えておきましょう。
また、自社の歴史や理念、実績なども合わせて語れるようになれば、家づくりにつながる独自のストーリーを顧客へ提示できるチャンスも広がります。
差別化戦略を考えていく中で、競合他社と自社との違いや、競合他社に依頼するメリット・デメリットなどを分析しておくことも欠かせません。
例えば、明らかに自社よりも資金力や技術力のある競合他社が、自社と同じ強みを宣伝している場合、異なるアプローチ方法を検討しなければならない場合もあります。逆に、周辺に同じようなサービスを提供する競合他社がなければ、それはそのまま自社の強みとなり得ます。
また、自社よりも成功している競合他社や注目を集めているライバルを客観視することで、自社に不足しているものが見えてくるかも知れません。
差別化戦略とは一般的に、自社と他社の差違を分析して、他社にない魅力やメリットを自社の強みとしてアピールしていく経営戦略です。また、競合他社にないアピールポイントを新しく作り、それを売りとして顧客獲得を目指していく場合もあります。
注文住宅の建築やリフォーム、リノベーションなどを請け負う工務店にとって、設計やデザイン、使用する資材や部材、採用する工法や独自サービスなど競合他社と差別化できる要素は多岐にわたります。そのため、個々の工務店の強みや特徴、さらに苦手分野を細かく分析した上で、どのような分野やサービスを強化することが最もメリットにつながるか、将来的な需要も考慮しつつトータルで検討していくことが重要です。
差別化戦略のメリットは、他社にないサービスや魅力を明確に打ち出してアピールできることでしょう。例えば費用面で他社よりも高かったとしても、独自サービスの魅力に納得してもらえれば、むしろ値引きなどを行わなくても顧客からの信頼を勝ち取れるかも知れません。また、独自サービスが自社の象徴として確立すれば、改めて企業の魅力を広めていくブランディングも容易になります。
差別化を考える上で、そもそも自社の強みや特徴にマッチしていない分野を狙っても企画倒れになるリスクがあります。また、特定のサービスを強調することで、イメージの固定化が進んでしまうこともあるでしょう。
イメージの固定化もブランディングの一貫と考えれば決して悪いばかりでないものの、何かしらの失敗やトラブルによってマイナスイメージがついてしまうとデメリットが増大します。
株式会社ナックは昭和46年に設立されて以来、50年以上にわたって建築業界で様々なノウハウを構築してきました。住宅受注に特化したコンサルティング会社として日本各地に複数の拠点を設けており、全国どこの地域であってもそれぞれのエリア特性や現状をしっかりと把握・分析した上で、具体的な経営戦略をサポートしています。
机上の空論を語るのでなく、あくまでも実効性のある戦略を具体的にコンサルティングすることで、早期にクライアント企業のメリットを追求していくことも重要です。
福岡県福岡市で社員8名の会社を経営しています。以前は九州エリアの地場ゼネコンの下請けを行っており、粗利はおよそ10%でした。しかし不安定な経営状態が長年の課題としてあり、ナックへ相談した結果、現在は素材や価格など多方面での差別化に成功し、幅広い顧客から住宅建築を受注しています。粗利も平均30%を超えており、値引き交渉などを一切しなくてもきちんと取引できる健全な経営体制が整いました。
ハウスリンカーズは住宅を建てたいと考えている人や工務店に対して、住宅ローンコンサルティングや工務店コンサルティングを専門に提供しているコンサルタント会社です。また、各地で講演やセミナーも開催しており、不動産業界の人材育成にも努めています。
ハウスリンカーズではクライアントとなる工務店の現状や特徴を分析して、他社との違いを明確化してメリットを追求し、差別化による企業のアピール力を高めます。また、短期的な計画でなく、長期的に事業を安定させられるよう具体策を提示することも特徴です。
北海道から沖縄まで日本全国の工務店から依頼を請け負っており、単なるパッケージ商品としてのコンサルティングでなく、それぞれの地域市場やエリアニーズにマッチしたオーダーメイドのビジネスプランを提案してくれます。
ビルダーズネットはクライアントのメリットを積極的にアピールして、実際の売上げアップを目指せるホームページコンサルタント会社であり、住宅会社に特化した専門コンサルティングを提供していることが特徴です。
クライアントの強みを細かく分析した上で、ホームページの構成やデザインを見直すだけでなく、DMを活用したアウトバウンド戦略も構築します。また、ホームページを訪れたユーザーの動向を分析してスコアリングしたり、過去の見学会参加者を見込み度ごとにリスト化して将来の顧客候補としてシミュレーションしたりと、ロジカルなアプローチで実効性を期待できる戦略を提案してくれることも重要です。
住宅会社専用のマーケティングオートメーション(MA)ツールを月額制で提供しており、クライアントの業務効率の向上をサポートしている点も強みです。
差別化戦略の本質は、単なる競合他社との違いを強めてアピールすることでなく、各クライアントにとって本当にメリットを追求しやすいポイントや、これならば他社に負けないという魅力を最大化していくことです。
そのため、差別化戦略のコンサルティングにはまずクライアントや競合他社の分析が必須であり、さらに得られたデータを活かしてプランニングする経験やノウハウも無視できません。
工務店として成長するために差別化を図っていこうと考える場合、まずは自社にとって本当に信頼できる工務店コンサルトを見つけられるよう、それぞれのコンサルトの特徴や強みこそをしっかりと比較検討していくことが大切です。
各企業によって得意領域は異なり、セミナーや事例を参考にしても、特色があります。「小規模工務店から大手のビルダーまで対応しています」という企業もたくさん存在するけど、工務店は企業規模によって課題が偏ってくる業界でもあります。年間棟数を5棟増やしたい工務店と、100棟を超えたので150棟を目指す地域ビルダーでは対策もまったく異なってきます。
企業規模を掲載している会社は、的確なコンサル戦略を立てているからこそ、各社の公式HPで決まった規模のアピールができると考えられます。こうした理由により、Google検索で「工務店コンサルタント」と検索し、検索結果に表示された会社のうち、公式サイトで「企業規模の記載」が確認できた3社をピックアップして紹介しています(※2021年8月1日時点)。